Last-modified 2010/09/12

TDQのレビューというか紹介というか


いきなり結論

このような良作に出会えて私は幸せでした。

TDQってなんぞや

正式名称はT-Dragon Quest。某えにっくすの看板RPG某ドラゴンクエストと似たようなシステムと全くオリジナルのストーリーを持ったRPG。某えにっくすとは何ら関係がないTNB製作所が作成。x68用のゲームとして1が1991年に,2が1992年に発表された。当初はDragon Ouestという名前だったためドラオエとも呼ばれる。

本家ドラクエとよく似たシステムを持っているということで,本家をプレイしたことがあればとっつきやすいだろう。呪文や道具の効果がよく分かっているというのは安心感がある。

所詮古くさい同人ゲームと侮る無かれ

あまり沢山語るとネタバレになってしまうので使い古された言葉になってしまうが,ただの勧善懲悪でなく,終盤のどんでん返しにもかなり驚かされるなど,秀逸なストーリー。最近のRPGにありがちな,一本道を進まされてるようなものではなく,本当に広大な世界を旅しているあの感覚。初期のドラクエにはまった人なら絶対お勧め。というか,やれ。

ぬるゲーマーにも喝

しばしばTDQはクソであると称される。その理由の殆どが,厳しすぎるゲームバランスによるものである。確かに1は厳しい。本家では,敵の使う呪文によって喰らうダメージは味方が使って与えるダメージに比べてその値が軽減されることになっているのだが,TDQ1にはそれがない。序盤で魔術師が3体出てきたら全滅を覚悟しなければいけない(2では本家同様軽減されるシステムになっている)。また,ゲーム開始直後,レベルが二桁ないと全く太刀打ちできない敵の出てくる地域にあっという間に(この「あっ」は比喩ではなく本当に一瞬)行けてしまう。このあたりを突っついてクソだクソだやる価値もないと騒いでる輩がたまにいる。全く嘆かわしい。

今挙げたような例は,TDQの価値を下げるものではない。そもそも,本家に比べてTDQは逃亡確率がグンと上がっているので,撃破が無理なら逃亡すればいいだけの話だし,まるで太刀打ちできない敵が出てくる件に関しては,最初の町で直接的な表現ではないにしろ,東には行くな行くと危ないぞと教えて貰えるはずである。いくらでも対処法はあるのだ。適当に敵を撃破しながらなんとなく進んでいけばちょうどよくレベルが上がっていって……みたいな最近のゲームに慣れてしまったからだろうか。うまく戦闘出来ないことや情報収集を怠ったことを棚に上げて批判とは,全く困ったことだ。

ということで,TDQは最近のヌルいRPGに辟易している方にもお勧め。発表された時期が時期だけに,まさに古き良き時代のRPGといった感じであろう。

独自の進化を遂げたシステム

TDQ1,2ともに本家5の発売前に発表されているので,基本的にシステムは本家2,3,4あたりを基本にしている。ただ,2に関しては,雑誌などで公開されていた本家5のスクリーンショットを参考にして作者が独自に手を加えている。

1:TDQ1のステータス画面
 
2:TDQ1の戦闘画面
 

図1はTDQ1のステータス表示画面である。これを見ても分かるとおり,透過処理がなされている。FC時代には出来なかったのかただ某えにっくすにやる気がなかったのか。ともかく,ここが一番大きな違いだろう。裏を返せば,TDQ1は本家に比べてシステムが大きく違うということではない。図2を見ても分かるように,AI戦闘も採用していない。「さくせん」とあるが,各キャラの呪文と道具の確認,表示速度の変更が出来るだけである。


3:TDQ2の戦闘画面
 

システムは,TDQ2で大きく進化した。まずは戦闘面。図3を見て分かるように,AIを採用したことがまず挙げられる。また,背景が付き,敵の並びも横一直線でなく若干ではあるが奥行きのあるものとなっている(このあたりは,本家5を超えている)。

AIで指示している「さしずのとおりに」は,本家5以降が言うところの「命令させろ」である。本家4で某神官がザラキを連発したことに業を煮やしたかどうかは定かではないが(笑),TDQ2のAIは各自に命令することが可能。本家と作戦名が違うのは,上でも挙げたように,本家5で参考に出来たのは数少ないスクリーンショットだけだったから仕方のないところではある。







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4:TDQ2のステータス画面群(ちょっと画像多すぎる……8枚。でも仕方ないのよ)

TDQ2のステータス画面は,もっとも進化した点であり,大きな目玉であろう。

図4のように,カーソルで移動させるだけで複数キャラのステータス,装備品,持ち物,呪文を見ることが可能。非常に優秀。本家でも是非採用してほしいものである。

5:道具の持ち替え
 

図5のように,TDQ2は道具の持ち替えが出来るようになった。頻繁に使うものなどは上に集めたりすることが多いが,その作業が非常に楽である。本家では自分に渡すという作業でアイテム欄の一番下に移動させるという技を駆使しなければいけなかったため非常に面倒であり,また装備が外れてしまうということもあった。持ち替えの場合は一発で自分の好きな場所に移動させられるし,装備が外れるということもない。


6:便利ボタン
 

TDQ2には便利ボタンが付いた。その使い方はAB同時押しであり,正確には便利「ボタン」ではないのだが,便宜上。

目の前の相手に話しかけたり,扉を開けたり,宝箱を調べたりする場合,AB同時押しで図6のようにコマンドが表示され,離すとすぐさま実行される。ただ,何もない床を調べるときには使えないので注意が必要。


7:アイテム交換
 

キャラが多いのもTDQ2の特徴と言えよう。パーティーは4人以内で編成しなければいけないが,最大で同時に10人以上のキャラが仲間になりルイーダの酒場で待機している。そして,その大半が道具を持つことが出来る。さながら,プチ預かり所と化すことが多い。

そんなわけで待機している仲間に貴重なアイテムを預けておくことは日常茶飯事だが,いざそのアイテムを使いたいというときに手間がかかるのでは困る。4人パーティーだった場合はまず1人と別れ,目的のアイテムを持っているキャラを入れ,アイテムを他のキャラに渡し,さらにキャラを元に戻す……などということをやっていたのでは時間も手間もかかりすぎて仕方がない。

が,TDQ2ではそんな心配も無用。図7を見ても分かるように,ルイーダの酒場に行けば待機してる仲間とのアイテムのやりとりも行うことが出来る(待機してる仲間同士のやりとりも可)。装備の使い回しも楽々。

このように,TDQはドラクエクローンでありながらただのクローンではない。本家のシステムを踏襲しつつ,改良するべきところはきっちり改良して非常に遊びやすいものとなっている。

また,TDQ2のAIは非常に優秀だということもしばしば耳にする。私はAIを殆ど使用しておらずいまいちそのあたりが分かってないのが実情だが。もっとも,本家4のAIはひどすぎたのでそれと比較すれば何でも……という話がなきにしもあらずかもしれない(笑

忘れた頃にやってくる

RPGにバグは付き物である。本家にもかなりのバグがあった。2のはかぶさの剣,3のランシールバグ,4の8逃げやカジノコイン838861枚,等々……。しかしこれらは,攻略を有利にこそすれ,ゲームがクリアできなくなるということはなかった。

TDQにも,攻略を有利にするようなバグが存在する。と同時に,クリアが不可能になるようなとんでもないバグが存在する。これがなかなかのクセモノ。

その恐ろしいバグで有名なのがTDQ2の「アイテム消失」と呼ばれるものである。ゲームの進行に重要なイベントアイテムなどの入っているはずの宝箱が最初から空いていて取得不能になってしまうのだ。これは,ゲームを進める順番が作者の意図と大きく外れた,アイテム欄が埋まっていたため一回空けた宝箱の中身を諦め道具を整理して改めて取りに来た,鍵を預けていて持っていなかったため後回しにした,などにより起こる「ことがある」と言われているが,詳細は不明である。詳細が不明なだけに,対策も不明。せいぜい上に挙げたようなことに注意しつつゲームを進めることくらいしか出来ない。もし起こってしまったのなら,最初からやり直す羽目になる。事故や天災と思って諦めるしかない。また,取得済みのアイテムがいつの間にか預かり所から天外消失ということはない。あくまで消失するのは取得前のアイテムである。

もっとも,私はTDQ2を10回以上プレイしたが,消失バグには1回しかお目にかかったことが無く,消失したのも「ゴールドカード」というゲームの進行上なくても問題のないアイテムであった。さらに,明らかに先に挙げた例の3番目「鍵が無く後回しにした」という理由により消失したことが(後から振り返れば)分かっており,注意していれば防げたものである。つまり,そんなに起こるものじゃないよ,ということで。極端に心配するようなことでもない。

ちなみに,この消失バグはTNB製作所配布のxdfイメージで起こりうるバグであり,バージョン違いのAJI版と呼ばれるものでは起こらないらしい。現在TNB製作所のwebサイトは消滅しており,入手できるのは消失バグの起こらないAJI版である。よかったよかった(それでいいのか)。

御託はいいから遊ばせやがれ

まずはDLからだだだ

で,結局どうしたら遊べるのか。先にも述べたとおり,TDQはx68用のゲームである。実機があれば当然遊べるのだが,このご時世x68を所持している人は少ないだろう。

が,Win・Mac用のエミュレータが存在しているため,Win・Macを使っている人ならば遊ぶことが可能である。

WinX68k高速版
WinX68k高速版/WinX68030の部屋で入手可能。今は亡き「けろぴー」というx68エミュレータの後継(でいいのかな)。私はこれを使用。お勧め。
EX68
EX68 (X68000 Emulator for Windows95/98/NT/2000)で入手可能。動作不安定などの報告もあり,個人的にはあまりお勧めせず。windrv.sysという,エミュレータ側からWin側のドライブを認識させるためのドライバが同梱されているので,使いたければ落としておくのが吉。
XM6
X68000エミュレータ XM6 -an eXcellent eMulator, type 6-で入手可。私は殆ど使ってないのでよく分かんない。頻繁にバージョンアップがされているようである。つまり,裏を返せばまだ発展途上ということだろうか。
X68000 Emulator for Macintosh
その名の通りこの中で唯一のMac用。X68000 Emulator for Macintoshで入手可。Macのことはよく分かんないので放置(ぉぃ)。

また,エミュレータとは別にx68のBIOSとOSが必要である(エミュレータの種類に依らず共通)。実機を持っている人は実機から吸い出せばいい。持ってない場合でも,SHARPが配布しているので大丈夫。SHARP様々である。

FSHARPというniftyフォーラム内のコンテンツで公開されているが,そこからDLしようとすると@niftyのIDとpassが必要となる。しかし,いくつかのサイトで転載されてることもあり,容易に入手出来る。X68000 LIBRARY内無償公開されたシャープのソフトウェアなどで入手可。上記EX68サイトでも入手可のようである。

BIOS
IPL-ROMというのがそれ。4種類あるけどどれでも問題ないので勘とフィーリングでどうぞ。XM6を使用する場合は1.0(X68BIOSE.LZH)でないと駄目らしい。
OS
Human68k 3.02。DOSっぽい。イメージ作成のときに使用する。

次に,肝心のゲームであるが,先にも少し述べたように制作元のTNB製作所はwebサイトが今はない。過去に非ディスクイメージ(x68の実機で遊ぶことを前提とした実機用のファイル)を公開していたサイトがあり,そこのキャッシュから入手することが出来る(通称AJI版)。また,TNB版をコッソリ配布しているサイトもある。ディスクイメージを作るのが面倒という場合は,探してみるのもいいかも。

AJI版TDQ本体
TDQの(自称)公式ホームページ内パッケージのダウンロードのwebarchiveのキャッシュから入手可。webarchiveってこういうとき便利だよねー

ディスクイメージ作らないとね

TNB版をうっかり入手しちゃったからイメージ作る必要ないさへへーん。という方は読み飛ばして頂いて。さっさとプレイしちゃっててください。

AJI版はx68用の生ファイルなので,エミュレータで扱えるようにディスクイメージを作らないといけない。x68エミュの方からWin側のHDDにアクセスする方法もあるが,Human68kを立ち上げてEX68同梱のwindrv.sysconfig.sysに組み込んで……などDOSの知識が必要となってくる。ので,その方法の解説は割愛(慣れればこっちのが早くて応用も利くんだけど)。ここではWindows用のツールであるところのDiskExplorerを用いることにする。Macに同様のツールがあるのか知らないけど,無ければ……どうするんだろうねぇ(ぉぃ)。おじさんMacのことはよく分かりません(逃げ)。

実験室:P内DiskExplorerに行ってDiskExplorerを落とす。適宜導入して使えるようにする。

次にTDQ用のディスクイメージを3つ用意する。そのうち2枚はシステム入り,1枚は空のものの必要があるのだが,ここではその全てをHuman68k(HUMAN302.XDF)をコピー・リネームすることによって用意する(説明のためにTDQ1.XDFTDQ2_A.XDFTDQ2_B.XDFとリネームしたことにするが,好きなようにリネームして構わない)。更に,ダウンロードしておいたTDQのパッケージ(tdq.lzhtdq2_a.lzhtdq2_b.lzh)を別々に解凍しておく。

以下tdq.lzhの場合について簡単に説明。その他2つの場合も同様であるので,適宜読み替えること。

DiskExplorerでTDQ1.XDFを読み込む。プロファイルは"plain image"でよい。すると,TDQ1.XDFの中身が表示される。

使用前
使用前(中身を弄ってあるので本来のHUMAN302.XDFとは細部が若干違うけど説明上影響は無いのでキニシナイ)

Human68kとなっているボリュームラベルは特に変更しなくても実働上問題は無いのだが,なんとなく気持ち悪いのでTDQ1とでも名前を変更しておく。次に,今のTDQ1COMMAND.xHUMAN.SYSを残してその他全てのファイルとディレクトリを消去する。

使用中
使用中

最後にtdq.lzhを解凍して得られたファイル群をDiskExplorerの右ペインにD&Dしてまとめて書き込む。tdq2_b.lzhの場合だけCOMMAND.xHUMAN.SYSも消去するのだが,あとは同様の手順でよい。

使用後
使用後

これで終了。素敵なTDQライフが待ってます。

あー長かった結局何が言いたいのさ

TDQは素晴らしい。非常にお勧め。やるよろし。というか,やりなさい。やって,損はしない。